債権放棄が税務上認められる場合とは(最判H16.12.24)
私的整理、法的整理を問わず、債権者側の債権放棄が税務上の損金に算入できるかは、大変重要な論点です。できない場合は、できるスキームを債権者側から要求されることもありますし、債務者側としては、当然、そのようや要求が出ることを前提に予めスキームを組むことになります。
この点、法人税基本通達9-6-1や9-4-1、9-4-2が重要になります。
子会社や関連会社などについて、債権放棄をすることは時々見られますが、簡単には税務上の損金算入は認められないと考えておいたほうがいいです。
この点が問題となった最高裁判例として、いわゆる興銀事件があります(最判H16.12.24)。これは興銀が、母体行として他の銀行より多くの債権放棄を税務上の損金に算入したことの適否が問題となったものです。
最高裁は「法人の各事業年度の所得の金額の計算において、金銭債権の貸倒損失を法人税法22条3項3号にいう『当該事業年度の損失の額』として当該事業年度の損金の額に算入するためには、当該金銭債権の全額が回収不能であることを要すると解される。そして、その全額が回収不能であることは客観的に明らかでなければならないが、そのことは、債務者の資産状況、支払能力等の債務者側の事情のみならず、債権回収に必要な労力、債権額と取立費用との比較衡量、債権回収を強行することによって生ずる他の債権者とのあつれきなどによる経営的損失等といった債権者側の事情、経済的環境等も踏まえ、社会通念に従って総合的に判断されるべきものである。」と判示しました。これでもまだ抽象的ですが、今後はこれによって判断しなければなりません。
なお、この判決は、結論としては納税者を勝たせています。理由は「Xが本件債権について非母体金融機関に対して債権額に応じた損失の平等負担を主張することは、それが前記債権譲渡担保契約に係る被担保債権に含まれているかどうかを問わず、平成8年3月末までの間に社会通念上不可能となっており、当時のA社の資産等の状況からすると、本件債権の全額が回収不能であることは客観的に明らかとなっていたというべきである。」からというものです。「社会通念上不可能となっており」というのは、ややあいまいではありますが、大変意義が深いと感じています。法律に書いてないし、契約もないけど、こうするしかないということは、時々あります。そのような事例が、一定の範囲で認められる余地があるということです。
このような点が、法律の難しいところでもあり、面白いところです!!