子ども・子育て支援法における給付費に相当する額の支払を求める債権は差押禁止に当たるか(最決R7.3.19)

本件(最決R7.3.19)は、子ども・子育て支援法に基づく「地域型保育給付費」に関し、保育事業者が市町村に対して有する債権が、同法17条により差押えが禁止される「子どものための教育・保育給付を受ける権利」に該当するか否かが争点となった事案です。

事案の概要は以下のとおりです。

  • Xは、保育事業者Yが熊谷市に対して有する債権(地域型保育給付費の支払請求権)を差し押さえる申立てを行いました。
  • 原審(東京高裁)は、地域型保育給付費は「子どものための教育・保育給付を受ける権利」に当たるとし、差押えを禁止すべきものとして申立てを却下しました。
  • これに対して本決定は、原審を破棄し、地域型保育給付費は差押禁止の対象には当たらないと判断しました。

最高裁は、子ども・子育て支援法29条の構造に注目し、以下のように解釈しています。

  • 地域型保育給付費は、原則として市町村が認定保護者に支給するが、5項の規定により保護者に代わって保育事業者へ支払う制度(直接支払制度)が認められている。
  • この直接支払制度に基づき、市町村に対して保育事業者が有する債権(いわゆる「保育事業者債権」)は、認定保護者に代わる支払先としての性質を持つものであり、保育事業者自身の債権として市町村に請求することが可能です。
  • 法17条は、認定保護者の権利保護を目的としたものであり、保育事業者の債権を保護する趣旨ではないため、保育事業者債権は同条の差押禁止の趣旨には含まれないと判断しました。

本決定は、差押えを禁止を認める法の趣旨と、子ども・子育て支援法に基づく「地域型保育給付費」に関し保育事業者が市町村に対して有する債権を認めた制度趣旨がずれるというところが根拠のようです。しかしながら、原審が差押えを禁止すべきものとしているように、微妙な判断であったと思われます。こういうところが法律の面白いところであり、難しいところです。

差押禁止債権は、こちらのサイトにまとめてあります。

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