このページは債権管理の方法について、整理しています。
取引を拡大していかなければ事業は大きくなりませんが、取引を拡大することは、リスクを増やすことでもあります。リスクをできるだけ抑えつつ、取引を拡大するためには、債権管理が重要です。債権管理は与信管理と時効管理に分けられます。
1 与信管理について
与信管理とは、取引先管理を言います。取引先を担当する営業と、書類関係の管理をする営業事務・財務・経理が一体となって行う必要があります。
⑴ 取引関係書類の管理
与信管理は、まず、契約、注文書、納品書、請求書などを管理するところからスタートします。書類関係を整理しておくことは、何かあった場合に迅速に対応するための基本です。また、取引先に対する与信額を把握するためにも必須です。これらの管理は、営業(フロント)よりもバック(営業事務・財務・経理)が管理することになりますが、営業担当者も把握しておく必要があります。
また、仮に取引先に対する債務があれば、それに関する書類もあわせて管理をする必要があります。
⑵ 取引先に対する与信限度額の管理
次に、取引先に対する与信限度額の管理を検討します。与信限度額を定めて、その範囲内での取引とし、仮に与信限度額を超える場合には担保を徴求する/決算書で与信判断をすることを条件とするなどの対応を取ります。なお、営業担当者が担当取引先に対する与信額を把握できるシステムを構築することも重要です。営業担当者は、与信限度額と与信額を確認したうえで、セールスをする必要があるからです。
与信限度額の定め方に決まった方法はありません。総合的な判断になります。また時期や、取引先の状況によっても変化します。例えば、コロナ禍により取引先の業績が悪化することが見込まれれば、与信限度額は縮小せざるを得ません。見直しをするタイミングを社内ルールとして決めておくことも必要です。例えば、6か月ごとに、営業担当者、事務・財務・経理担当者、経営層が会議を持ち、見直すなどのルールを定めておくことが考えられます。
なお与信限度額は決済条件とも連動します。決済サイトが長い場合、与信額が膨れますので、与信限度額を埋めてしまうことになります。そのような場合には決済条件を見直すように取引先と交渉する必要もあります。
2 時効管理
時効は近時の民法改正で大きく変更されました。以下は、改正後の内容です。施行日前に債権発生の原因である法律行為がされた場合は、施行日前の時効制度が適用されますのでご注意下さい。なお、条文は民法の条文です。
1 時効期間
時効期間は以下のとおりです。
取引契約に基づく債権は、債務不履行があれば権利行使をすることができることを知ることが一般的ですので、5年となります。
原則 | 下記以外(166条1項) | 権利を行使することができることを知った時から5年間 権利を行使することができる時から10年間 |
例外 | 人の生命又は身体の侵害による 損害賠償請求権(167条) | 権利を行使することができることを知った時から5年間 権利を行使することができる時から20年間 |
2 時効の中断について
時効中断の基本は「承認」となります。なお、後々のトラブルを防ぐため、承認は日付を入れた書面(債務弁済約定書など)で徴求すべきです。なお時効経過後であっても債務承認すれば、時効は中断します(最判S41.4.20)。
事由 | 効果 | 時効の完成猶予の効力がなくなる場合 |
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承認 | 更新(152条) | |
催告(書面による請求) | 催告時から6か月完成猶予(150条1項)。なお、再度の催告に完成猶予の効力はありません(150条2項)。 | 6か月以内に裁判上の請求等をしない場合(150条)。 |
支払督促 | 手続係属中は完成猶予(147条1項)。 確定することなく終了した場合は終了時から6か月は完成猶予(147条1項)。 確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、更新(147条2項)。 | 確定することなく終了した場合で、終了時から6か月以内に、裁判上の請求等をしない場合(147条1項)。 |
和解及び調停申立て/破産手続参加/裁判上の請求 | 手続係属中は完成猶予(147条1項)。 確定することなく終了した場合は終了時から6か月は完成猶予(147条1項)。 確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、それぞれの事由が終了した時に更新(147条2項)。 | 確定することなく終了した場合で、終了時から6か月以内に、裁判上の請求等をしない場合(147条1項)。 |
確定判決等による権利の確定 | 更新、時効期間は10年(169条1項) | |
仮差押え、仮処分 | 事由終了後6か月経過まで完成猶予(149条)。 | 事由終了時から6か月以内に、裁判上の請求等をしない場合(147条1項)。 |
強制執行、担保権の実行等 | 手続継続中は完成猶予(148条1項)。 申立ての取下げ又は取消し以外の理由による手続の終了により更新(148条2項)。 | 申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した時から6か月以内に、裁判上の請求等をしない場合(148条1項)。 |