このページは管財人が役員の責任を追及する手段(方法)についての説明しています

管財人が責任追及すべき具体的なケースは、会社法上、役員の責任が問われる場面と基本的には変わりません。責任追及の主体が、会社・株主なのか管財人なのかが異なるだけです。役員の責任については、管理人が管理する外部サイトですが、以下のリンク先をご参照ください。

管財人が破産会社の役員の責任追及をする場合の手段(方法)は概要以下のとおりとなります。

1 保全措置(破産法177条

管財人は、破産法177条に基づき、役員の財産に対する保全処分を申し立てることが可能です(なお、この場合立担保不要とされています)。

2 役員責任査定申立(破産法178条

簡便な、責任追及手段です。破産裁判所に係属します。

申立⇒審尋期日(破産法179条2項)という流れで進みます。

認容決定の場合
  ・判断に不服がある役員は異議の訴えが可能です(破産法180条1項
   金額に不満がある場合は破産管財人も異議の訴えが可能です。
  ・異議の訴えがないと確定します(破産法181条)。
棄却決定の場合
  ・管財人は通常訴訟が可能です。

3 会社法423条等に基づく訴訟

・通常訴訟による損害賠償請求の訴え提起。通常部に係属します。
・管財人は、査定申立をせず、いきなり会社法423条等に基づく責任追及の訴えをすることも可能です。例えば、証人尋問の必要性が高い場合や、相手方が争っていて査定で認容決定が出ても異議の訴えとなる可能性が高い場合に、管財人は査定申立をせず、最初から訴訟を提起することを検討します。

大阪高判H27.5.21 破産会社の社外監査役(公認会計士)について、取締役会に内部統制システム構築を助言又は勧告すべき義務違反、及び取締役としての任務懈怠行為に該当する代表取締役の解職を取締役会に助言又は勧告すべき義務違反が認められたが、重過失はなかったとして責任限定契約の適用を肯定した裁判例(上告棄却)

裁判例を確認する
破産者甲社の破産管財人Xが、甲の社外監査役であったYに対し、善管注意義務に違反して甲に損害を生じさせたとして、破産裁判所に対し役員責任査定の申立てをしたところ、破産裁判所は、Yには善管注意義務違反があるものの、同違反につき悪意重過失があったとは認められないとして、責任限定契約に基づく範囲での責任を認める旨の査定をしました。
Yは、Xが善管注意義務に違反したことについては重過失があり、上記責任限定契約の適用はないなどと主張し、Yを被告として査定決定の変更を求めて提訴したのが本件です(他にも、いくつか係属していますが省略します)。一審も本判決も、査定通りの認定をしました。