このページは、管財人が、どのような判断基準、考え方で債権認否を行うのかについて説明しています。
このページでは、債権の種類ごとに、管財人が債権認否をする際の考え方をまとめています。なお管財人が正式に異議が出す前に、管財人が債権者に対して取下げるように促すこともよくあります。
なお、特に断りのない限り、条文は破産法です。
1 届出債権が手形・小切手債権の場合
手形債権については、手形の原本の確認を求められることが一般的です(届出時点では手形・小切手の両面のコピーを貼付し、配当手続の際に確認することもあります)。
当然ですが、手形要件/小切手要件を満たしていることが必要です。
開始決定後1年を超える満期は中間利息が劣後的破産債権となりますので、当該金額につき異議が出されます(破産法99条1項2号)。また、原因債権と手形債権の両方を届けた場合、一方につき異議が出されます(参考裁判例 東京地裁H20.9.19)。
東京地判H20.9.19(破産):基礎となる事実関係を共通にする選択的な関係にある債権についての認否に関する裁判例
Xの破産者甲に対する債権Aが訴訟で確定している状態で、Xは債権Aと選択的な関係にある債権Bについても債権届出を行ったため、債権Bにつき破産管財人Yが認めませんでした。Xから査定申立てがなされ、破産裁判所が0円と査定したため、Xは破産債権査定異議訴訟を提起しましたた。
本判決は、債権Aについて確定をしている場合、選択的な関係にあるB債権について確定を求める実益が無く、0円とした査定を妥当としてXの請求を棄却しました。
手形割引をしている場合、割引いた銀行が手形債権を、割引依頼をした者が原因債権を届けることがあります。この場合、いずれか一方のみが認められることになります。
2 停止条件付債権(敷金返還請求権など)
異議が出され、停止条件が成就した際に異議が撤回されることがあります。
なお、最後配当の除斥期間の満了前に停止条件が成就していない場合は、配当手続から除斥されます(破産法198条2項、205条)。
3 事前求償権、将来の求償権
通常、原債権が届け出られていますので、全額異議が出されます(破産法104条3項)。
4 外国通貨金銭債権
破産手続開始日の東京外国為替市場の電信為替売相場の終値を基準として換算した金額で認否するとされています(破産管財の手引(第1版)269頁 東京地裁破産実務研究会著)。
5 代位弁済者の届け出
全額の代位弁済がされていなければ、原債権が届け出ていない場合を除き全額異議が出されます(破産法104条2項、4項)。
代位弁済後、原債権者から代位弁済者への名義変更をする必要があります。
6 別除権付債権(担保権付債権)
別除権付債権は、除斥期間満了までに別除権不足額が証明されない限り配当から除外されます(破産法198条3項、205条)。
よって、別除権不足額が確定するまでは、配当額を0円として配当表が作成され、除斥期間満了までに不足額の証明があれば、配当表の更正(破産法199条1項3号)を行ったうえで、配当が実施されすます(破産管財の手引(第1版)251頁 東京地裁破産実務研究会著)。
なお、破産者以外の第三者が物上保証している場合には別除付債権にはなりません。
7 劣後的破産債権
破産手続開始後の利息・遅延損害金は劣後的破産債権になります。
届出をしても、取り下げが促され、取り下げに応じない場合には一般破産債権としては異議が出されます。
8 その他、管財人の債権認否に関する参考裁判例
広島地裁H10.3.6(破産):支配会社の債権届出が信義則に反し許されないとされた事例
破産会社甲社の破産手続において、甲を事実上支配していたXの破産債権届出に対し、破産管財人Yが異議を述べました。そこで、XがYに対して、破産債権確定訴訟を提起しました。Yが倒産手続において支配株主等の権利を一般債権者より劣後的に扱うべきとする米国の理論(「ディープロックの理論」)が適用されるべきと主張して争ったところ、本判決は、かかる理論は採用しなかったものの、Xが届出債権を行使することは信義則に反して認められないとして、請求を棄却しました。
東京地判H3.12.16(破産):親会社債権を劣後的に扱うことは認められないとした裁判例
Xが、完全子会社Yの破産手続において債権届出を行ったところ、Y及び他の債権者が異議を出したため、XがYらに対し破産債権確定訴訟を提起しました。 本判決は、債権者が支配会社であることを理由に、劣後的取り扱いをすることは認められないとして、Xの請求を認容しました。