このページは破産債権の債権届出→債権認否→確定手続の一連の手続について説明しています

破産債権者の債権届出額に特段の問題がなければ、届出額で確定をします。管財人が全部ないし一部について認めない場合、債権確定手続に進みます。なお、理屈上は、他の債権者も再建届出に異議を出すことができますが、実務上はほとんどありません。

なお、特に断りのない限り、条文は破産法です。

1 債権届出から確定までの流れ(全体像)

債権届出から確定までの流れは以下の通りです

①裁判所が債権届出書(フォーム)を知れたる債権者へ送付

⓶債権者が裁判所へ債権届出書(債権額等記載のもの)を提出

③管財人による債権認否

確定(手続)

以下、個別にご説明をします。

なお、 破産債権は、破産法に特別の定めがある場合を除き、破産手続によらなければ、行使することができないとされています(破産法100条1項)。よって破産債権(優先的破産債権を含めて)を破産手続外で争うことは、原則としてできません(参考裁判例:東京地判H27.11.12)。

東京地判H27.11.12 破産債権者が優先的破産債権を有することの確認を求める訴えは、不適法であるとした裁判例

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Xが、破産者甲に代わり同人が国に対して負担する租税債務を第三者弁済し、甲に対して求償権を取得するとともに、国が破産者に対して有する租税債権について、弁済による代位が生じたとして、同債権(破産法148条1項3号に当たる財団債権に係る部分を除く。)について、甲の破産管財人Yに対して、優先的破産債権が存在することの確認を求めたのが本件です。本判決は以下のように説示して、Xの請求を認めませんでした。
「破産法は、債権者その他の利害関係人の利害及び債務者と債権者との間の権利関係を適切に調整し、もって債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図るとともに、債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的とし(破産法1条)、破産法100条1項は、基準時である破産手続開始時の債務者の総資産と総負債を破産管財人により清算し、債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図るという上記破産制度の目的を実現するため、破産債権者による個別的権利行使を抑止し、破産財団からの配当に権利の実現を委ねるべく、破産手続外での権利行使を禁止した規定であると解される。
 そうすると、破産債権の行使については、法律に特別な定めがある場合を除き、当該債権の満足を求めるすべての法律上及び事実上の行為は破産手続によらずにすることはできないのであり、債務名義に基づく強制執行や保全執行のみならず、給付訴訟や積極的確認訴訟も破産債権の行使として許されないというべきである。

2 債権届出書の債権者に対する送付

裁判所は、申立書記載の債権者(知れている債権者)に、破産手続開始通知書及び債権届出書を発送します。なお、実際には申立代理人弁護士や破産管財人が発送作業を行う場合もありますが、裁判所の封筒で届きます。破産債権者は、当該通知で破産の事実を知ることもあります。

3 債権者による債権届出の提出

債権者が裁判所(又は裁判所の指示で管財人)へ債権届出書を提出します。

債権届出は、原則として裁判所の定めた債権届出期間内に提出をしなければなりません(破産法111条1項)。

破産債権者がその責めに帰することができない事由によって一般調査期間の経過又は一般調査期日の終了までに破産債権の届出をすることができなかった場合には、その事由が消滅した後1か月以内に限り、債権届出をすることができます(破産法112条1項)。この場合、特別調査期日が設定されます(破産法119条2項)。なお、破産法112条1項の要件を満たさないとした却下決定に対して即時抗告することはできないとされています(東京高決H30.2.26)。

東京高決H30.2.26 破産法112条1項の要件を満たさないとした却下決定に対して、即時抗告することはできないとした裁判例

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株式会社甲の破産事件において、X(国)は届出期間が相当経過した後に破産債権の届出をしたところ、破産裁判所は、破産法112条1項が定める一般調査期日終了後の届出の要件を満たすものでもないとして、却下決定をしました。そこで、Xが却下決定に対する即時抗告をしたのが本件です。本決定は以下のように説示して、抗告を棄却しました。
「破産法9条は、破産手続等に関する裁判につき利害関係を有する者は、破産法に特別の定めがある場合に限り、当該裁判に対し即時抗告をすることができる旨を定めている。これは、破産手続における裁判は原則的に決定で行われるところ、決定に対する原則的な不服申立方法は抗告であるが、破産手続の迅速性を考慮し、裁判の早期確定の必要から、不服申立方法を申立期間に制限のある即時抗告に限るとともに、不服申立てができる裁判を具体的に規定することとしたものと考えられる。このような破産法9条の規定及びその趣旨からすると、破産法は、即時抗告の対象となる裁判を限定的に列挙しているのであって、破産法上即時抗告をすることができる旨の特別の定めがある裁判がされた場合又は民事訴訟法の準用により即時抗告の対象となる裁判がされた場合を除き、即時抗告の対象とはならないといわざるを得ない。
 しかるところ、破産法112条1項は、破産債権者が、その責めに帰することができない事由によって届出をすることができなかった場合には、その事由が消滅した後1月以内に限り、一般調査期間経過後又は一般調査期日終了後に破産債権の届出をすることを許容しているが、破産債権の届出が上記要件を満たさないことを理由に破産裁判所がこれを却下する決定をした場合に即時抗告をすることができる旨の破産法又は民事訴訟法上の定めはない。したがって、上記決定は即時抗告の対象となる裁判に当たらないと解するのが相当である。

債権届出書の記載事項や添付資料などについては以下のリンク先をご参照ください。

4 債権認否

管財人は、破産者の資料などを参考に、届出債権の存否や額について確認し、届出債権を認めるか(一部)認めないかを検討し、認否書を裁判所に提出しなければなりません(破産法117条。これを債権認否といいます。他の債権者も届出債権について異議等を出すことができます。

なお、管財人は、除斥期間満了までの間(除斥期間満了前に破産債権査定申立て期限が満了する場合は、その満了までの間)であれば、債権査定の申立てがされず確定してない限り、異議を撤回することが可能とされています。撤回した場合、管財人は当該債権者に通知しなければなりません(破産破産規則38条)。

管財人の債権認否の考え方や裁判例などについては、以下のリンク先をご参照ください。

5 債権確定手続

⑴ 管財人が認め、他の債権者が異議を出さない場合

特に他の手続なく、確定します(破産法124条1項

⑵ 管財人が認めず、又は他の債権者が異議を出した場合

査定/訴訟により確定します。より詳細には、債権確定手続きは以下のように整理できます。

場合分け手  続
管財人が認めず、又は他の債権者が異議を出した場合で、届出債権者が争う場合査定申立て破産法125条)⇒査定異議の訴え(破産法126条
管財人が認めず、又は他の債権者が異議を出した場合で、開始決定時に訴訟が係属していた場合受継破産法127条)で処理されます。
管財人が認めず、又は他の債権者が異議を出した場合で、届出債権者の債権が有名義債権であった場合異議者等は、破産者がすることのできる訴訟手続によってのみ異議が可能です(破産法129条1項)。未確定の終局判決の場合は、訴訟受継で処理(破産法129条2項)。
管財人が認めず、又は他の債権者が異議を出した場合で、届出債権者が期間内に査定等をしなかった場合管財人/他の債権者の異議が認められます。

なお、最後配当の除斥期間(破産法198条)の末日が、調査期日(又は調査期間の末日)から1か月以内であった場合、除斥期間の末日までに査定の申立をする必要があるので注意が必要です(東京地判H29.11.17、東京地判H23.9.29)。

東京地判H29.11.17 最後配当に関する除斥期間が経過した後の債権査定申立てについて、配当手続に参加する余地のなくなった破産債権の査定を求めるものであるから、法律上の利益を欠き不適法であるとした裁判例

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破産者甲の破産管財人Yは、平成28年5月11日の債権調査期日において、甲の届出債権について「認めない」として異議を述べました。同月12日、YはX代理人に対し、「最後配当の御通知」し、破産裁判所に対しみなし到達日を同月18日、除斥期間等の起算日をみなし到達日と同日とする旨記載した「除斥期間等の起算日届出書」を提出しました。この結果、最後配当の除斥期間は同月31日となりました。Xが同年6月13日に、破産裁判所に対し、破産債権査定申立てをしたのに対し、産裁判所が却下決定をしたのが本件です。本判決は、以下のように説示してXの請求を認めませんでした。
最後配当に関する除斥期間について定めた破産法198条1項の内容は、上記のとおり一義的に明確であるし、破産法上、最後配当に関する除斥期間が破産債権査定手続の申立期間に合わせて伸長される旨の規定は存在しない。また、実質的に考察しても、破産法が最後配当に関する除斥期間を定めているのは、債権確定手続に着手していない破産債権を配当手続から除外することにより、最後配当手続の簡略、迅速な進行を図るためであって、これは破産法の目的に照らし合理的な内容であると解され、最後配当に関する除斥期間について、明文の規定に反してまでこれと異なる解釈を採用する理由は見出し難いといわざるを得ない。
  したがって、最後配当に関する除斥期間を債権調査期日から1か月と解することはできない。・・・なお、破産債権査定手続の申立期間の経過前に最後配当に関する除斥期間が経過することに関しては、前記前提事実記載のとおり、本件異議通知書において、予め、異議を述べた債権者が配当に加わるためには、破産法が定める債権確定手続を配当に関する除斥期間内に行う必要があることについて下線を引いて分かりやすく注意喚起され・・・、除斥期間内に破産債権査定の申立てをするよう促されており、債権者に対する手続保障も十分に行われているところである。」

査定申立について、詳しくは以下のリンク先をご参照ください。