このページは、破産手続における公租公課の取扱について説明をしています。
破産手続において、公租公課債権は、他の債権に優先します。公租公課(の一部)を支払って、他の債権に対する支払をすることができずにて破産手続が終わることも、よくあります。
破産手続における公租公課の取扱について、一般の破産債権者が知っているべき事項はあまりないことから、【専門家向け】とさせて頂きました。内容はそれほど難しいものではありません。
1 破産手続における公租公課債権の扱い(概要)
公租公課の範囲は以下のとおりです。
正式には「租税等の請求権」(国税徴収法又は国税徴収の例によって徴収することのできる請求権:破産法97条1項4号で定義)と呼ばれています。
分 類 | 具体的な内容 |
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公租 | 国税、地方税 |
公課 | 健康保険料、厚生年金保険料、国民健康保険料、労働保険料など |
その他 | 下水道料金、独禁法上の課徴金、土地区画整理方の換地清算金など |
該当しないもの | 宝くじの販売代金納付請求権(福島地いわき支判H15.2.5) 金商法上の課徴金 |
2 公租公課の財団債権・優先的破産債権等の区分
公租公課の財団債権・優先的破産債権の区分をまとめると以下のとおりです。
⑴ 破産手続開始前の原因に基づいて生じたもの
破産手続開始前の原因に基づいて生じた公租公課の、破産手続上の取扱は概要以下のとおりです。なお、破産手続開始前の原因に基づくか否かは、納税義務が破産手続き開始前に発生しているか否かで判断されます。
分類(注) | 破産手続上の取扱 |
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開始当時、納期限未到来又は納期限から1年以内 | 財団債権(破産法148条1項3号)。 なお、開始後に発生した延滞税も含まれます(破産法148条1項4号)。 |
上記以外(破産法98条1項) | 優先的破産債権 ただし、延滞税・利子税・延滞金のうち、破産手続開始後に生じたものは劣後的破産債権と解されています(破産法99条1項、97条3号)。 |
(注)納期限は具体的納期限(=その日まで納付しなければ,履行遅滞に陥り,滞納処分を受ける期限)を指すとされています。
⑵ 破産手続開始後の原因に基づいて生じたもの
分類 | 破産手続上の取扱 |
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破産財団の管理換価に関する税金(注) | 本税は、他に優先する財団債権(破産法148条1項2号、152条2項) 延滞税・利子税・延滞金は財団債権(破産法148条1項4号) |
上記以外 | 劣後的破産債権(破産法99条1項、97条3号)(最判S62.4.21) |
(注)破産財団の管理に関する税金とは財団に含まれる財産にかかる固定資産税や自動車税などを指します。また、換価に関する税金とは財団財産の売却にかかる消費税、印紙税、補助者報酬の源泉徴所得などを指します。
3 破産管財人の税務申告(参考)
破産管財人が行う税務申告の概要は以下のとおりです。
時期(時系列) | 呼び方 | 原則的申告期限(法人税法74条) |
事業年度開始日~破産手続開始日まで | 解散事業年度 | 破産手続開始日の翌日から2ヵ月以内(例外的に3ヵ月以内)。 |
破産手続開始日の翌日~事業年度の末日 | 清算事業年度第1期 | 事業年度終了から原則として2ヵ月以内。 |
事業年度開始日~事業年度末日 | 清算事業年度第X期 | 同上 |
事業年度開始日~残余財産確定日 | 清算確定事業年度 | 残余財産確定日から原則として1ヵ月以内。なお、「残余財産確定日」は、法文上は定義はされていないため、必ずも明確でありませんが、一般的には資産の換価が終了した時点とされています。 |
破産手続終結 |