このページは、担保に関する基礎知識の入口のページになります。担保関係の基礎知識を整理しています。
担保は様々な種類があります。大きくは法定担保と約定担保に分かれます。
約定担保は、契約がなければ成立しないもので、債権保全の基本になります。ただし、取引相手方が了解しないと設定できませんので、力関係などに左右されます。
法定担保は、契約がなくとも成立するものです。意識していない方が多いですが、事案によっては、大きな武器になります。
なお、特殊な担保として、代理受領、振込指定、仮登記担保、工場抵当といった方法もありますが、いずれも主に金融債権者が使用するものですので、ここでは触れていません。
1 法定担保権
⑴ 留置権(民事留置権/商事留置権)
民法295条(民事留置権)・商法521条(商事留置権)に基づき発生する留置権について整理したものです。留置権とは、債権の担保として、債権者の手元にある債務者所有物を留置できる権利です。約定担保ですので、相手方との合意がなくても成立します。
⑵ 一般の先取特権とは、担保対象物及び種類、被担保債権について
一般の先取特権は民法306条に以下のように定められています。
第306条 次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の総財産について先取特権を有する。
一 共益の費用
二 雇用関係
三 葬式の費用
四 日用品の供給
一般の先取特権の被担保債権は、以下のように定められています(民法307条~310条)
種類 | 被担保債権 |
---|---|
共益の費用の先取特権 (民法307条) | ・各債権者の共同の利益のためにされた債務者の財産の保存、清算又は配当に関する費用 ・すべての債権者に有益でなかったものについては、その費用によって利益を受けた債権者に対してのみ先取特権は存在する |
雇用関係の先取特権 (民法308条) | 給料その他債務者と使用人との間の雇用関係に基づいて生じた債権 |
葬式費用の先取特権 (民法309条) | ・債務者のためにされた葬式の費用のうち相当な額 ・債務者がその扶養すべき親族のためにした葬式の費用のうち相当な額 |
日用品の供給の先取特権(民法310条) | 債務者又はその扶養すべき同居の親族及びその家事使用人の生活に必要な最後の6箇月間の飲食料品、燃料及び電気の供給 |
⑶ 動産売買先取特権について
特別の先取特権は、条文上はかなりの数ありますが、動産売買先取特権以外は、実務上ほとんど利用されていません。動産売買先取特権については、以下のリンク先にまとめていますのでご参照ください。
2 約定担保権
⑴ 質権
質権は、比較的なじみのある担保権かと思われます。以下のリンク先に整理をしました。
⑵ 抵当権/根抵当権
抵当権/根抵当権は、最もポピュラーな担保権かもしれません。裁判例も多いところですので簡単ではありますが、以下のリンク先に整理をしてみました。抵当権と根抵当権に分けています。
⑶ 譲渡担保
最近では、多くの場面で利用されている担保権です。比較的裁判例も多いです。以下のリンク先に整理をしてみました。通常の譲渡担保と集合譲渡担保(集合債権譲渡担保、集合動産譲渡担保)に分けています。
⑷ 所有権留保
最近、売買契約などでよく見かける担保権です。以下のリンク先に整理をしてみました。
3 最新の担保関係の投稿
最新の投稿の中から担保関係のものをご案内致します。
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