このページは連帯保証の設定において注意すべき点を整理しています。
物的担保の提供を受ける以外に、連帯保証人を付けてもらう方法があります。会社代表者などが連帯保証するケースがあります。
個人の連帯保証は、近時の民法改正で制度内容が変更になっていますので注意が必要です。改正後の内容について説明をしています。
1 はじめに
債権保全には、物的担保の提供を受ける以外に、連帯保証人を付けてもらう方法があります。会社代表者などが連帯保証するケースがあります。なお、保証は書面(電磁的方法を含みます)によらなければ効力を生じません(民法466条2項、3項)ので、ご留意ください。
個人の連帯保証は、近時の民法改正で制度内容が変更になっていますので注意が必要です。以下は改正後の内容になります。具体的には、①保証人に対する情報提供義務と、②個人根保証契約締結にあたっての留意点がございます。
なお、貸金等債務(金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務)については、個人の連帯保証につきさらに制限がありますが、取引債務の連帯保証とは関係ないため、触れていません。また、「経営者保証に関するガイドライン」が実務上運用されていますが、これは金融債務に対する保証を念頭においた定めですので、こちらについても触れていません。
2 保証人に対する情報提供義務
保証人に対する情報提供義務には、債権者が情報提供義務があるケースもあるので留意が必要です。
保証人保護の観点から、債権者ないし主債務者に、保証人に対して一定の事由について情報提供をする義務が、課せられています。内容は以下のとおりです。
項目 | 主債務の履行状況に関する情報提供義務 (民法458条の2) | 主債務者が期限の利益を喪失した時の情報提供義務 (民法458条の3) | 事業債務にかかる保証契約締結時の情報提供義務(※) (民法465条の10) |
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情報提供義務が発生する保証人 | 個人、法人いずれも | 個人のみ | 個人のみ |
保証委託 | 必要 | 不要 | 必要 |
対象主債務 | 限定なし | 限定なし | 事業のために負担する債務を主たる債務とする保証契約又は、主たる債務の範囲に事業のために負担する債務が含まれる根保証契約 |
情報提供者 | 債権者 | 債権者 | 主債務者 |
開示時期 | 保証人請求時 | 主債務者が期限の利益を喪失した時で、債権者がその利益喪失を知った時から2箇月以内 | 保証契約締結前(保証の委託時) |
開示対象 | 主債務の元本及び利息、違約金、損害賠償その他主債務に従たる全てのものについての不履行の有無並びにこれらの残額及びそのうち弁済期が到来しているものの額 | 主債務者が期限の利益を喪失した旨 | ・主債務者の財産及び収支の状況 ・主債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況 ・主債務の担保として他に提供し、又は提供しようとするものがあるときは、その旨及びその内容 |
義務違反の効果 | 特別の定めなし(通常の債務不履行責任。損害賠償請求や、保証契約の解除)。 | 債権者は、保証人に対し、主債務者が期限の利益を喪失した時から通知を現にするまでに生じた遅延損害金(期限の利益を喪失しなかったとしても生ずべきものを除く。)に係る保証債務の履行を請求することができない。 | 情報提供がないため又は、事実と異なる情報を提供したために保証人が誤認をし、かつ、主債務者が情報を提供せず又は事実と異なる情報を提供したことを債権者が知り又は知ることができたときは、保証人は、保証契約を取り消すことができる。 |
(※)事業債務にかかる保証契約締結時の情報提供義務(民法465条の10)については、開示するのは主債務者ですが、保証契約を取り消された場合最も被害が大きいのは債権者です。そして、主債務者が情報を提供せず又は事実と異なる情報を提供したことを債権者が知ることができた場合、保証人は取消しができることから、債権者としてどこまでのことをしておく必要があるかが議論されています。債権者としては、保証人から適切な情報開示を受けたこと(提供を受けたと考えられる情報の内容を含めて)の確認書を取る、主債務者から適切な情報開示をした旨の表明保証を取るなどの対応が必要になると思われます。まだ裁判例もなく、また実務も固まっていないことから、注意が必要です。
3 個人根保証契約締結にあたっての留意点
個人根保証契約を締結する場合、極度額を定める必要があります(民法465条の2第2項)。極度額を定めない場合、保証契約の効力は生じません。
また、主債務の元本確定事由は以下のように定められています(民法465条の4第1項)
①債権者が、保証人の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき(強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る)
②保証人が破産手続開始の決定を受けたとき
③主たる債務者又は保証人が死亡したとき
債権者が主債務者の財産について強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき及び、主債務者が破産手続開始決定を受けたときは元本確定事由とはなっていません。